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![]() 8月25日(金)下北沢アレイ・ホール、 多和田葉子(朗読)、高瀬アキ(ピアノ)、斎藤徹(ベース)によるコンサート、 《カタコトのうわごと》〜言葉と音の響きとひび〜。朗読とピアノとベースと、そして静寂が 織り成すコラボレーション。 高瀬アキさんが数年前から作家多和田葉子さんとユニットを組んでいるという話は ご自身がいつも熱くお話してくださるのでよく存じ上げていたが、 実際に音として聴くのは今回が初めてのこと。 単なる朗読とジャズ音楽という融合にとどまらず、ときにはお互いが面白おかしく、 ときにスリリングに絡み合うパフォーマンスの世界にしっかりと引きずり込まれた。 生憎この日は下北沢商店街の夏祭りと重なってしまい、 お囃子の高鳴りが遠ざかるまで開演を遅らせることに。いつもならコンサート後に開かれる ワイン&フーズ・パーティから始まった。こじんまりとしたホールのせいか、 あちこちから談笑する声が聞こえ、待たされているものの和やかな雰囲気だった。 遅れることおよそ1時間。お囃子の終わりも確認できないまま見切り開演、 最初の4曲は高瀬アキ&斎藤徹によるデュオ演奏。 インプロヴィゼーション《in to the music, out of the awa dance by aki + tetsu》に始まり、 七変化の音の戯れに心の準備を促されているようだ。 本日の耳が出来上がった頃に続いての2曲目は コンテンポラリー作曲家ツィンマーマンの作品《Allegro Agitato》。高瀬アキさんはこの作品が大好きだそうで、 8人ほどの編成曲をアレンジしたもの。 こうした点描的な作品はアキさんのもっとも得意とするところだろう。 続いて、お馴染みの《Close Up》とミシャ・メンゲルベルグの《Who's Bridge》。 最初のステージ後半から多和田葉子さんが登場。いよいよコンサートのタイトルにもなっている 《カタコトのうわごと》。 タイトルについてはそっとリンクした [こちら] のページを。(^^;) 実際に朗読に使われているテキストは幾つかの本から、もしくはこのコンサートのために書かれた テキストが使われているようだった。 《ちゅうりっひ》の最初の方では多和田葉子さんは少々アガッていたかもしれない。 あとで白石かずこさんの「ちょっと戸惑っていたわね?」との問いに「あ、見透かされてましたぁ」と答えていた。 日本の聴衆だからという言葉もどこかから聞こえてきて面白く聞いていた。 多和田さんはハンブルクに移り住んでもう18年にもなるのですねぇ。 《O adana O Istanbul》は多和田&斎藤コンビで、斎藤徹さんのベースが異国情緒を醸し出していた。 《光とゼラチンのライプチッヒ》は多和田葉子さんの最新刊のタイトル。この曲では、 リスナーの方々にそれぞれこの本の好きなページを開いてもらい、そこを朗読していくというもの。 ご自分で書いたものとは言え、いきなり突き付けられてこんなにも見事に朗読できるものかとちょっと驚き。 休憩です!という朗読、ではなく言葉で前半のステージが終わる。 さて、後半。高瀬&多和田コンビで7曲。これまでドイツでも行なっているギグでもあり、 息の合ったお二人の掛け合いはじゅうぶん一体化していた。 今回は日本向けの構成にしたところもあったとのこと。 《ein wort》ではプリペアド奏法withピンポン球で。これはドイツ語による朗読。 《2045年》はまさに多和田ワールドを繰り広げたものと言えるだろう。 みんな朗読を聞き漏すまいと一所懸命耳を傾けているので、 言葉が聴き手に吸い込まれていくような感じがしていた。ピアノは断片的な音飾りのように響いた。 《事件》で多和田さんはカリンバ(ンビラ・親指ピアノ)を演奏。音を紡ぎ出すというイメージ。 もっとも面白かったのが《かける》。日本語の「かける」という言葉はさまざまな使われ方をしているわけで、 カバーかける、アイロンをかける、掃除機をかける、塩をかける、眼鏡をかける、ラジオをかける、迷惑をかける、 罠にかける、、、欠ける、掛ける、架ける、賭ける、描ける、書ける、、、それらがたくさん詰まっている曲だ。 そして「かける」のところだけアキさんが言葉を掛ける。その掛け合いがこれまた絶妙だった。 《音楽の病院》はゲームセオリー・ミュージック朗読版とでも? あらかじめ幾つかのパターン、優しく滑らかに朗読する、怒ったように朗読する、機械仕掛けのように朗読する、 の合図が決められており、高瀬アキさんがプロンプターとして合図を出しながら演奏を変化させていくもの。 次に多和田&斎藤で《国境を越えてきた薬売り》。斎藤徹さんがベースに鈴やチャイム?を取り付け、 笛を吹き、ベースもアルコ弾きや楽器を叩くなど様々な表現を披露。 今夜、もっとも斎藤さんらしい演奏だったような気がしたが、はたしてどうだったのだろう? ラストは3人での演奏で《氷菓子》。多和田さんはオロシ金(ですか?)を楽器に使い、 日本語とドイツ語が目まぐるしく交錯するテキスト。朗読と音楽演奏が交互に行なわれて どんどん加速していく感じの曲だ。 アンコールに《月の逃走》。 |
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2000/08/25 Set List 01. インプロヴィゼーション in to the music, out of the awa dance by aki + tetsu 02. アレグロ・アジタート 03. クローズ・アップ 04. フーズ・ブリッジ 05. ちゅうりっひ 06. O adana O Istanbul 07. 光とゼラチンのライプチッヒ 08. 13 09. namaru namari 10. ein wort 11. 2045年 12. 事件 13. かける 14. 音楽の病院 15. 旅は未知の道ずれ 16. 国境を越えてきた薬売り 17. 氷菓子 アンコール 18. 月の逃走 Ken Ogawa / Sep.02.2000 |