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高瀬アキ&林栄一・デュオライブ
  @小淵沢《月下草舎》 (Sep.29.2002)


9月29日(日)小淵沢《月下草舎》、高瀬アキ&林栄一デュオ・ライブ。

9/29
月下草舎
まずは、小淵沢《月下草舎》の紹介から。。(^^;)
小淵沢《月下草舎》:http://kobuchisawa.gr.jp/gekka/
個人的には一昨年ハンガリーのギタリスト、ヨージェフ・エトヴェシュのプチコンでたいへんお世話になり、 ステキなひとときを過ごしたところなので思い入れは大きい。ぜひご紹介しておきたい。
13:00
コスモス
コスモス咲き乱れる玄関にて。 「アキさんから何時に着くか連絡ありましたか?」 「なんにもないです。ミュージシャンの方々は時間までに来てくださればいいのでいつも心配していないんですよ〜。」 会話した直後、怪物さんこと龍野治徳さんに連れられて高瀬アキさん&林栄一さん月下草舎到着。
14:30
月下草舎オーナーご夫妻も一緒に一階テーブルを囲んで談笑。 昨今のジャズ・イヴェントやジャズ・フェスの話などする。 調律師の 堀本幸隆 さんが草加から到着し龍野さんとの久々の再会を喜ぶ。 「そうだ!怪物さんだ!本名で言われたから判らなかった。うゎー、お久し振りですねー。ふけましたねぇ」 「変わらずお若いですねぇー」。。。あの頃は、、で新宿ピットインの想い出話に盛り上がる。 以下は怪物さんのウェブサイト。
THE PARTY - TATSUNO PLANNING Inc.:http://party.jp1.nu/
「調律師さんがピアノの鍵盤が重いので充分弾き込んでみてくださいとのことです」 「そんなに重くはないわって言ってください」
林さん、前日呑み過ぎたとのことで就寝。 黒田京子さんに連絡してみる。「もしもし。今どの辺?」「え〜、、、まだ家。。。」 しばらくの間、各自思いのままに過ごす。
17:00
黒田さん、小淵沢到着。すでにスパシオにて茹で上がり良好のご様子。 アキさんと迎撃、合流して《月つきや舎》で蕎麦食らう。 「元気でした?」「はい元気でしたよ」「最近の日本はどうなの?」 そして、お二人はペーター・コヴァルトさんの話をしんみりと。
18:00
《月下草舎》戻り。東京ご一行、井上さん、相澤さん、あやさんがすでに、続いて樋口さんが到着。 すでに和やかな雰囲気になっていた。
打ち合わせ?
アキさん&林さん、演奏曲順打ち合わせ。今回ツァーの最終日ゆえ、実際は走り書きメモ渡すだけで以上終了。
19:30
第壱部始まり。 今夜のライブは2ステージで、 アキさんと林さんのオリジナル曲とミシャ・メンゲルベルク、チャーリー・ヘイデンなどの曲を演奏。
第壱部:デュオ
//第壱部//
1. うぐいすもち Nightingale Ricecake / Aki Takase
2. 氷菓子 Gelati / Aki Takase
3. つる / Eiichi Hayashi
4. Double Lotus / Eiichi Hayashi
5. Who's Bridge / Misha Mengelberg
6. 睡眠と目覚めの間で / Eiichi Hayashi
〜 Poor Wheel / Misha Mengelberg
第壱部:高瀬アキ
第壱部はノッケから崩しだ。曲はアキさんのオリジナルで Nightingale Ricecakede で「うぐいす餅」だそうな。。。 もう1曲オリジナル、林さんの3曲、そしてミシャ・メンゲルベルクの2曲。 吹き抜け構造のためか音が上に抜けるようで正面に進む音には少々力が欠ける感じがする。
音で描く情景美とでも言えそうな林さんの《TSURU》にはいたく感動。 目を閉じて聴いていると北海道の光景が浮かんでくるようだ。
第壱部:林栄一
21:00
ここで第壱部を終えて休憩、談笑。 調律師の堀本さんが「仕事のし甲斐があるというものです!」と感激しながら飛んでくる。
「TSURU、いいですよね」「ぁ、ほんと?」
「ネジ使っちゃうわ。」「えっ、調律師さんいる前でやっちゃいますかぁ?前もって言っておくとか?」 「・・・(にゃっ)」
21:30
第弐部始まり。オリジナルはアキさんの4曲、林さんの1曲にチャーリー・ヘイデン、デューク・エリントン。
第弐部:デュオ
//第弐部//
1. 枕草子 / Aki Takase
2. 祈り Gebet / Aki Takase
〜 La Pasionaria / Charlie Haden
3. 中国犬 China / Aki Takase
4. The African Flower / Duke Ellington
5. 私の背中の後ろ Hinter Meinen... / Aki Takase
6. 回想 / Eiichi Hayashi
第壱部:林栄一
違うショットを、と思って二階の回廊へ上がってみた。 ファインダーを覗きながら、音が生き生きとしていることにびっくり。 ピアノの蓋の反射角にしてもサックスのあさがおの向きにしてもまさに正面で、 下で聴いた音とはまったく違う。音が元気に立っていて素晴らしい。 もう下へは降りられなくなってしまった。
第壱部:高瀬アキ
予告通り(ついに!)内部奏法。今回はいつものピンポン球にネジ。 ネジ使いは初めて見た。どのように使っているかよく見えなかったのが残念。 内部奏法が終わったもののネジ回収ができず、あとの曲まで引きずっていたのだが、 ネジは林さんにも飛び火したのかリガチャのネジが不調で終始調整しながらの演奏だった。 しかし、そんなことはモノともせず演奏は素晴らしかった。
23:00
打上げパーティ。
堀本さん、回収した残留ネジをアキさんへ届けに来る。満足げな笑み。
ふたたび談笑。林家の6匹の猫ちゃんたち、学校給食のいまむかし、家庭に於ける夫婦の役割、 楽器は演奏するものではなく集めるものだ!話から バンブーサックス・アンサンブル『あやとその仲間たち』結成企画話まで、 椅子取りゲームをしながら楽しく話す。
26:00
「音」のパーティ。
林さんがアキさんと黒田さんのデュオを所望。突如、音の打上げパーティに。なんともスペシャルな夜。 デュエット・パフォーマンスはセロニアス・モンクの《ミステリオーソ Misterioso》。 アキさんが高音域、黒田さんが低音を。
第参部:高瀬アキ&黒田京子デュオ
午前2時頃、林さんはソロで3曲ほど演奏。最近よく演奏している 《平和に生きる権利 Right To Live in Peace》も演奏し大いに喜ぶ。
第参部:林栄一ソロ
27:30
散会。 自分にとって、このおふたりのデュオ、音による対峙、共鳴、そして会話は、 もしかしたら日本のジャズ・ミュージシャンで最も聴きたいと望むユニットなのではないかと思った。 言葉では言い尽くせない贅沢なひとときを過ごした。


Ken Ogawa / Oct.06.2002






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高瀬アキ&林栄一・デュオライブ
  @小淵沢《月下草舎》 (Sep.29.2002)


9月29日

 午後、車を飛ばして小淵沢に向かう。ペンション・月下草舎で行われる、 高瀬アキ(P)さんと林栄一(as,ss)さんのデュオを聞きに行くためだ。 で、その前にちょいと温泉。うんむ、当然の行為だわい(笑)。 で、お風呂上りに牛乳を飲みながら、夕方5時少し前くらいだっただろうか、友人に電話をすると、 アキさんとこれからお蕎麦を食べに行くところだと言うので、便乗させてもらうことにする。 久しぶりに会ったアキさんはすこぶる元気な様子でうれしくなる。

 月下草舎に着くと、既に友人たちは到着していて、夕飯も食べ終え、ビールも飲んでいる。 日が暮れていく中で、みんなでライヴが始まるのを、なんとはなしに話をしながら待つ。

 地元のお客様も数人来て、演奏が始まる。2ステージ、ほとんどアキさんと林さんのオリジナル曲で、 チャーリー・ヘイデン、ミンガスなどの曲も差し挟まれた演奏。 曲ごとのアプローチ、方法論が明確で、妥協することなく、 互いに互いのもっとも良いところを引き立てた演奏内容になっていたと思う。 個と個が屹立している演奏というのは、こういう演奏のことを言うのだと感じ入った。 すばらしい、の一言に尽きる。

 去年ここで自分が演奏しているので、場所の響きやピアノの状態はよくわかっている。 何故か湿気を殊のほか含んでいて、残念ながら、決して弾きやすい、 あるいは立った音が飛んでいくような楽器ではない。 けれど、それをあれだけ弾きこなすアキさんはさすがだと思った。 あったりまえじゃ、っちゅうの(失笑)。(アキさんは、私が丸二年間、ジャズ・ピアノを習った師匠です。)

 林さんはマウス・ピースの調子が悪い様子で、何度も付け替えたりしていた。 音質、音色、奏法等々、曲によって使い分け、その音は確実に聴衆の心に響く。 響きまくって、最後には涙までちょちょぎれそうになった。

 至福の夜。終了後、ペンションに泊まる友人たちと共に、打ち上げに参加。 アキさんとも少し話をする。アキさんは日本に帰るたびに、 日本の聴衆の無反応さをひしひしと感じているようだった。 うーむ。ジャズ(一応、そう言っておくけれど)をめぐる日本の状況は、決して良い状態とは言えないのかもしれない。

 深夜4時頃だっただろうか。散会、ったって、二階に上がってベッドにもぐりこむだけだから、 こんなに幸せなことはない(笑)。 いい音楽を聞いて、楽しく話しをして、眠る。 久しぶりの極楽気分なり。

黒田京子 / Oct.05.2002

※ 本稿は 黒田京子さんのウェブサイト のダイアリからご本人のご承諾を得て収録させていただきました。


Last Revised : Oct.06.2002