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黒田京子 さんから岩本町TUC《高瀬アキ&黒田京子ピアノ・デュオ》ライブの速報が入ったのが 6月15日のこと。それからずっと心待ちにしていたライブ。そのレポートをオフステージ部分を含め、 そして黒田さんのダイアリーを交えながらフラッシュバック・ページにしてみました。 ![]() 高瀬アキ&黒田京子デュオ、いよいよライブ開始。 この日はセロニアス・モンクとそれぞれのオリジナル、斎藤徹さんの曲などで構成、 後半のステージではそれぞれソロを取り入れ、半ばに黒田さんの蛇腹あり、オーディエンス参加あり。 昨晩とはまた違うカタチの音の絡み方で、これまた面白く聴いた。 黒田さんもけっこう仕掛けてましたね。(^^;) 譜面の代弁者からは遠い世界、その時その瞬間の刹那に賭ける音、 その時の2人の会話を居合わせ端で楽しんでいるような気分ながら、 それがこのスタイルの、ジャズの最も醍醐味のあるヴィヴィッドな部分だとつくづく感じていた。 アキさんのソロでは内部奏法、金属皿(プリンの型)とピンポン球。エリザベス・ホイナツカの片鱗を見ちゃったな(笑)。 そして、アキさんのいつもの力強いタッチにまたこうして生で触れ、兎に角嬉しかった。 ピアノのタッチの違いを正確に言い表わすことは難しいし、 どこがこれほどまでに聴き手の心動かすのかよく判らないが、 アキさんのタッチを聴いていると「やっぱりこれだよ、これ」という言葉を発してしまう。 タッチもフレージングも然り。それらによって構築された音、そして音楽も自分にとってはとっても響くのだ。 だからこそ、こうして長い年月を経てもずっと聴いていたいと欲するのだろう。 ほんぢゃ、この日のセットリスト。
1999/08/20 Set List Stage #1 - Thelonious Monk 01. Consective Second 02. Four In One 03. Bemsha Swing 04. 'Round Midnight ( Kyoko Kuroda, solo ) 05. Ugly Beauty 06. Ask Me Now ( Aki Takase, solo ) 07. Jackie-ing - Thelonious Stage #2 01. 風のダンス / 斎藤徹 ( Kyoko Kuroda, solo ) 02. Duo Piano Improvisation / Aki & Kyoko 03. Aki 's Solo, Miss New Orleans 04. A Bit / 斎藤徹 05. Who's Bridge? / Misha Mengelberg 1stセットは「Consective Second」から。これはモンクがビッグバンドとやっているものに収められているらしく、 実は私は聞いたこともなければ、やったこともない曲。メロディーはkeyがFのように聞こえ、 ベースラインはB♭に聞こえてくる、ヘンな曲である(笑)。始めからがんばらない曲をやりましょ、 というアキさんの提案によるもの。 う、う、う、自分が妙にうわずっている感じがする。リハーサル後に少しピアノの調律をした様子で、 なんとなく鍵盤の感触とその響きが違うのだ。これにずいぶんとまどってしまった。 2曲目は「Four In One」。これはアキさんも私もきちんと演奏したことがない曲。 自宅でのリハーサルでただやってみようとだけ決まり、TUCに着いてからのリハーサルで、 テーマはラストだけ弾いて、途中のフレーズのシークエンスを使って即興をしてみませんか? と私が提案したもの。結局即興の中味はフリーになってしまったが、 これはもっと徹底的にミニマムの手法を使って、ピアノならではのサウンドを作れたと、 後ですごく思った。 しかしリフが速すぎて、私はちゃんと弾けなかった。う〜む、テクニックがなくて、すみません(失笑)。 3曲目は「Bemsha Swing」。これはアキさんがカノンを考えてきていて、 メロディーを追いかけるようにやってみた。 次はバラードを3曲。ここでピアノをチェンジ。私がC3の方に移る。 バラードはほとんどテーマだけをやろうということで、私のソロ「'Round Midnight」から。 これは自分で言うのも恥ずかしいが、中途半端な最低の演奏だったと思う。ごめんなさい(失笑)。 無理してやらなければよかったのかもしれない。北里君からは「まるで進歩していないのが問題だ」と言われた。 もしくは、これも後で考えたが、できるだけピアノで、というアキさんの意見にあがなって、 アコーディオンを2台使ってやってみればよかった。 アイディアが後から湧いてくるようではいけませんね(^^;)。 そして「Ugly Beauty」。モンクには珍しい3拍子の曲で、 当初私はこれをソロでやろうと思って練習していたのだった。 それはともかく、私はアコーディオンに持ち替えて演奏。 これは自宅でグロッケンなども使ってみて、結局音が長く持続する楽器、 アコーディオンがなんだかぴったりきたので、やってみることにしたもの。 正直言って、自宅でのリハーサル、そしてTUCでのリハーサルの時の方が、演奏はよかったように思う。 メトロノームではない、もっと互いの呼吸で演奏できていたからだ。 バラードの最後はアキさんのソロで「Ask Me Now」。 このステージ最後は「Jackie-ing」と「Thelonious」をカップリングさせて、私がアレンジしたもの。 「Jackie-ing」は全体のサウンドのイメージを、工事機械のボウリングのごとき感じで、 ピアノのクラスターで作っていく、というアイディア。 それと対照的に「Thelonious」はその半音進行が多用されているコードチェンジを生かして、 細かくちょこまかと変わっていく、ピアノのタタタタタというサウンドのイメージで提案してみた。 別に両方の曲でそれぞれがソロをとらなくてもよかったのだが、そういう風になってしまった。 この「Jackie-ing」で、アキさんにはそのクラスターのリズムがマーチに聞こえてきたらしく、 途中でいくつかのマーチが出てきた(あの向田邦子の『阿修羅の如く』に使われていた曲も出てきた)のには、 ちょっと笑ってしまった。私とイメージしているものがまったく違ったのだ。 実は、この前半のモンクについては、私はなんとなくリハーサルの時の方が面白かったような気がしている(^^;)。 作っていく過程が面白かったのかなあ。 ステージ合間に『音場舎』の北里義之さんと初お目通り。 秘密結社?《mysyc》のお二人、オルガン・ビルダー大林コ吾郎さんと《Pseudo-POSEIDONIOS》主宰である佐々木裕二さん、 そして大林さんのお連れのアリオン音楽財団の飯田一夫さんとも雑談少々。 久々にフィドラー鈴木奈保子(す〜)ちゃんにも会え、元気そうでなにより。 尽きぬ話も第2部開始で次回に持ち越し。 そして、後半戦に突入(笑)。 最初は私のソロから。 斎藤徹さん(b)作曲の『風のダンス』を、始めはアコーディオンを使い、歌をうたい、 お客さんの何人かに鈴などを渡して、いっしょにリズムをとってもらいながら始めた。 ふう、客席も含めた全体の空気が少しはやわらかくなっただろうか。 次はフリーの即興でピアノデュオ。互いに仕掛けたり、仕掛けられたり。 私としてはちょっとまともにノリ過ぎたかなと感じているが。 3曲目はアキさんのソロ。ここでピアノをチェンジして、アキさんがC3に移る。 アキさんのソロはピアノの中に、アルミのプリンの型とピンポン玉をたくさん入れての演奏。 初めて見た人は不思議な音を聞いた感じだったと思う。 4曲目は斎藤徹さん(b)が作った『A Bit』。これは単純なモチーフだけが書かれたもので、 去年ローレン・ニュートン(vo)と3人で、府中市のジャズ講座の時に演奏したもの。 これを最初アキさんが内部奏法でやり、私は普通にピアノを弾いたのだが、 微妙にサウンドした箇所もあった感じがして、弾いていても気持ちがよかったところがあった。 ピアノという楽器でしか表現できないであろうサウンド、という感じがしたのだろう。 ラストはミシャ・メンゲルベルク(p)作曲の『Who's Bridge?』。AABA形式のAの部分が循環になっている楽しい曲。 これが、ざっとやった曲である。 黒田さんのこの日のダイアリーはまだまだ続きます。 続きはぜひご本人の サイト でどうぞ! ![]() ということで、演奏も終わり、大澤さんと手分けして、かつての同窓生にもDMを出しまくったおかげで、 それこそ15年ぶりに会った人もいたりして、0時頃までお店で談笑。 お店での談笑、アキさん、黒田さん、大澤さん、横井さん、岡崎さん、橋本善則さんらと。 ここで、高瀬アキ門下生の方々のレッスン時代の思い出話に花が咲く。 大澤さんが語るさまざまなエピソードには一同大いに笑ったわらった。 それからアキさんのデビュー・アルバム《AKI》の話題でひとしきり盛り上がる。 ピンクのレオタードかぁ〜。(^^;) 大澤さん、大喜びす。 岡崎さんからは昔の新宿ピットイン(裏)のアキさんライブ思い出談、「兎に角、怖かった。^^;;;」。 語りたらぬまま0時頃お開きと相成った。 アキさんをホテルへ、横井さんと大澤さんを最寄駅へ送ってから、いざ帰路に。 と思いきやふたたびアキさんのホテルに拉致される。(^^;) 最近のパソコン事情について調書を取られ、またまた談笑再開。 ここでの話題はずいぶんと大きなテーマであった。 つまり、日本人のジャズ・プレイヤーはとても熱心に勉強しているが、 「ジャズというものはこういうものだ」という固定観念があまりに強く、 それに忠実に目指そうとするがために真の音楽の部分を喪失している、という憂いについてだ。 その話はアキさんが15年前に日本を去った時の話にまで遡っていた。 その頃、アキさんはヨーロッバでのジャズ・フェスティバルを経験し、 日本と向こうとの「セッションする」違いがあまりに異なっていることを痛感したのだろう。 それに呼応するように、黒田さんもここ数年のセッションについて多くの体験を話していた。 話を聞きながら、けっきょく日本人プレイヤーの多くは模倣・コピー主義なのかもしれない、などと考えていた。 セッションしながら自分のソロ番が回ってくると、 この時とばかりに自分のセオリーや愛すべき巨匠のスタイルをぶちかます。 そこに会話という意味でのセッションは成り立っていないこともままある。 そのことは送り手であるプレイヤーの問題よりもジャズをどう捉えているか、 音楽をどう受け止めているか、セッションとは何か?といった、演奏以前の問題であろうと。 学校での音楽教育の話題も出た。今、子供たちのどれだけがピアノを習っているのか? 文化のひとつである音楽を知る機会としての教育があるか否かなどなど。 ヨーロッパで共に演奏するプレイヤーたちの音楽の捉え方は、 日本人のそれと比べてとても熱く寛大なのだそうだ。それは自分の音楽観というものがつねに投影されており、 ジャンルを越え音楽というものを全体的(というより文化的)な受け止め方をしているという。 そんな彼等とのセッションはやはり音やリフや崩しの豊かさが全然違うのだろう。 ジャンルも形式も一切排斥して、 現前に今!鳴り始め流れ出る音楽を、音を一体どんな響きや感動や動機や語りなのか、、、 自分の耳で聴いてみようという習性こそが音楽理解の根本かもしれない。 このテーマについては横井さんがかつて『ジャズ批評』の記事として纏めたアキさんの インタビュー を読むとさらに掘り下げられるでしょう。 その後、PC-VAN関係の友人である、手伝ってくださった四方さん、 録音をしてくださった岡崎さんなどとも話をして、帰宅は4時をまわっていたと思う。 このお二人のことを、アキさんから「あなたはいい友だちを持っているわね」と言われた時は、 なんだかとってもうれしかった。私がパソコン通信で知り合った人たちは、 みんな実際ビョーキ持ちだが(^^;)、温かい愛すべきビョーキ持ちだと思う(笑)。 足を運んでくれたすべてのみなさん、四方さん、岡崎さん、大澤さん、 アキさんのお手伝いをした横井さん、そしてもちろんアキさんに、この場を借りて、 心から感謝の気持ちを贈ります。 黒田さんを家まで送り届けて、帰宅したのが朝の5時。ハッピーな気分のまま布団に潜り込んだ。 また近いふたたびアキさんのピアノをライブで聴けることを楽しみにしつつ。 そして、素晴らしい"TUC Days"にお導きくださった黒田京子さんに心から感謝します。 ![]() Back |